ボタンを押してすぐに音楽が止まった。店内に緊迫した空気が張り詰める。


カラオケの機械の所から自分の席に戻る途中に下手な歌声の彼女と目が合って、彼女は私を睨んでいたが気にしなかった。


「リカちゃんえらい~」と満足気な声でそう言ってくれたキョウちゃんの顔を見て私は嬉しくなる。目の前のホスト達は何が起こったのかわかっていないようで不思議そうな顔をしている。


そんな事をしている間に私達3人はいい気分で酔っ払う。3人でカラオケを歌う事になってホストに曲を入れてもらう。そしていよいよ曲が始まった、と思った矢先に曲が止まる。一瞬戸惑ったが原因はすぐに理解した。私はさっきの下手な声の彼女を睨みつける。


一瞬その彼女と目があったが、すぐに彼女は目をそらした。つまらない女…そう思う。


気を取り直してもう1度歌を入れ直す。曲が流れ始めて10秒も経たないうちにまた曲が止まる。…またあの女か…キョウちゃんの顔を覗くと不機嫌な顔で一言だけ呟いた「行け。」キョウちゃんのGOサインを受けた私はすぐさま手にもっていたビール瓶を床に叩きつける。バリーン!と景気のいい音を立ててビール瓶が砕け散る。一瞬の静寂、そして次の瞬間には下手な声の彼女のもとへ駆け出していた。店の注目が一気に私の所へ集中する。